部署を横断したプロジェクトで、新しい分野を切り開く
「キャベツの芯を無駄にするな。
新しい名物をつくって、産地に貢献しよう!」
プロジェクトメンバー
長井孝道(営業部門) 川口玲央奈(開発部門)
稲垣沙織(販売管理) 鮎川紘樹(品質管理室)
みまつ食品の主力製品である餃子の原料・キャベツのうち芯の部分5%は可食部とならず、従来は産業廃棄物として捨てざるを得なかった。群馬の名産でもあるキャベツを余すところなく用いて仕入先の農家の方々にとってもメリットとなるような事業を展開したい。それが、プロジェクトに込めた思いだった。キャベツの芯を液体にし、それを原料にさまざまな商品を開発する。その商品を日本全国に発信してブランド力をアップすることを事業の目標に掲げ、2017年、プロジェクトは発進した。
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プロジェクトを進める上での壁は?
- 長井 第一弾はキャベツサイダー。素材に嬬恋産キャベツを用い、ヘルシーというよりも群馬の新名物を目指しました。
- 川口 試作品づくりは開発部の私が担当。一口に開発といっても餃子と飲料では全く違う。何が美味しいのか、受け入れられるのはどのような味か、といったところから手探りでスタートしました。
- 鮎川 私は品質管理担当。飲料は初体験だったため、微生物などの衛生管理では検査を外部の衛生検査機関に依頼。飲類については何が基準となるのかノウハウがなかったため、検査機関から検査項目などについて情報収集し勉強するところから始めました。
- 稲垣 私は販売管理担当として、特に新規に開拓したお客様からの注文を処理し、現場に配送までの手配から請求業務まで担当しました。そういった業務の面では、既存商品と同じです。
- 長井 稲垣さんがいないと、お金が入ってこない(笑)。営業としては、当然ながら従来は餃子などの商品しか扱ったことがありません。ノウハウのない炭酸飲料を売ることができるのかという不安がありました。
- 鮎川 それぞれの役割に加え、味、色、パッケージデザインなどについては、それぞれの業務が一段落した後にみんなで集まって入念に検討を重ねました。
- 長井 一般的にサイダーはジュースじゃないですか。とはいえキャベツサイダーが他の商品のように甘くていいのかという疑問があり、「苦くしたほうがいいのでは?」という意見が出てきました。そうはいっても、苦すぎてまずかったら、お話になりませんよね。
- 川口 そういう甘さと苦さのバランスで試行錯誤したという感じでした。キャベツらしさが感じられないと個性が出ません。
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壁を乗り越えるために
- 川口 サイダーは試飲を通し、全メンバーとのブレーンストーミングから、方向性を煮詰めブラッシュアップ。キャベツのエキスが多過ぎると味がきつくなり、受け入れられなくなる恐れが出てくる。いかに風味を保ちつつキャベツエキスの適量を見極めるかということがポイントでした。
- 鮎川 キャベツ感が足りないという意見があって、次に出されてきた試作品では逆にキャベツ味が強すぎた。甘味がなくて、青臭いっていう。
- 稲垣 あの時はめちゃくちゃまずかった(笑)。
- 長井 キャベツの個性が強過ぎると、結局、飲料としてはまずくなるんですよ。
- 鮎川 最終的には多数決を行い、満場一致でした。
- 長井 候補が最終的に2つあって飲み比べると、味については個人の好みの違いもあって選びがたい面がある。その場合、両者の中間的なものがいいかというと、決してそんなこともない。どっちつかずの味になるのは避けたかった。そうしたところで、みんなの意見としてこれだったら納得できるかなというものに落ち着いた。
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パッケージにもこだわった
- 鮎川 パッケージデザインをどうするかですごく悩んだね。
- 長井 最初、デザイン事務所にコンセプトを伝え、方向性に変化を付け4案ほど作成してもらった。そこからみんなで意見を出し合って、結果的に4種類それぞれのアイデアをミックスしていくような感じ。
- 鮎川 可愛い、クールなどいくつかの方向性のデザイン案が上がってきたんですね。
- 長井 中にはすごくオシャレで格好いいデザイン案もあったのですが、群馬のキャベツをテーマとする商品に合っているかという問題もありました。ダサい部分がある方がいいんじゃないかっていう(笑)。
- 稲垣 インスタ映えなどSNSでの露出を考え、写真で撮影した時のインパクトも考慮しましたよね。
- 長井 他メーカーのサイダーも用意し、並べて撮影して埋没しないかどうかもチェックしました。
- 鮎川 どれだけパッケージで主張できるかっていうこと。会議室にしばらく缶詰になって検討したんですよね。
- 長井 味よりもデザインに時間をかけたかもしれない(笑)。最終的に可愛らしいデザインに決め、お店の評判も上々でした。
- 稲垣 キャベツサイダーは視覚的にインパクトのある緑色でしたし、ぐんまちゃんのキャラクターも使わせていただき、若い人が手に取りやすい商品に仕上がったと思っています。そこそこ売れるのではないかと思いました。
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サイダーが完成した時の思いは?
- 鮎川 最初の試みの商品がようやく完成したものの、果たして売れるのだろうかという不安感を持ちました。ポジティブな他メンバーの「いける!」という言葉に元気付けられたと思います。
- 稲垣 外注先の製造工場で、初めての製造にみんなで立ち会いました。シールも貼られていない状態の商品がラインから出てくるときは、うれしかったですね。出来立てでまだ温かいサイダーをみんなでダンボールに詰めて数本持ち帰りました。
- 川口 自分たちで決めたデザインのパッケージに彩られた商品が完成したときは、感動です。お店に並んで、多くの人に手に取ってもらえたらいいなあと思いました。
- 長井 みんなで力を合わせた商品が完成した喜びと同時に、これから頑張って売っていかなければいけないという決意も生まれました。いろいろなところに広めていくぞという気持ちです。
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プロジェクトを通じてのやりがいは?
- 長井 「100軒でも200軒でも回り、その中で1軒、2軒でも決まればいい、まずは行動することが大事」と上司から叱咤激励され、精力的に動きました。餃子の得意先であるスーパーなどとは異なるところがターゲットです。インターネットで調べ、お土産店などの観光関連を中心に動きました。結果的に20〜30カ所の開拓に成功。最初のお店が決まったときは、「明日から並ぶぞ!」という思いでした。次は「売れなかったらどうしよう」っていう気持ち。
- 鮎川 キャベツサイダーには、お客様相談室の電話番号が記載されています。品質管理室がお客様相談室を担当していますので、「美味しかったよ」とか「どこで取り扱っているのか」といった問い合わせの電話をいただきました。「美味しかったよ」という声を聞いた時は、すごくうれしかった。お客様に認められたと思いましたね。
- 稲垣 このプロジェクトでは、自分の業務が終わってからみんなで集まって遅くまで議論しました。他部署の人と関わることができて交流が広がったと思います。
- 川口 違う部署から集まって、意見を出し合いながら一つのものを築き上げていくスタイルのプロジェクトは楽しかったと思う。開発部では通常一人でものづくりを行っていますので。試作品までは自分一人で完結する場合がほとんど。今回は、普段は聞くことのできない周りの意見をたくさん知ることができました。
- 長井 みんなで一緒に商品を仕上げて販売することが初めてだったので、いろいろやりとりしたことが良い経験になりましたね。
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その後の展開
- 長井 不安を感じながらも発売が始まった。発売当初、「どうですか」とお店に聞くと、夏に向かう時期だったこともあり、売れ行きは非常に好調。ホッとしましたね。その後、餃子などの商品ラインナップの中に、別のアイテムが加わったという感じで営業活動を継続しています。第2弾であるキャベツゼリーは2018年に発売。サイダーで開拓したお店に案内し、スムーズに発進できました。
- 鮎川 サイダーもゼリーも各種メディアに紹介していただきましたね。今後は自分たちメンバーもキャベツエキスを何に転用できるかを考え、提案した上で商品化していきたい。
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稲垣 私も、みんなでゼロから企画してみたいと思う。キャベツの芯が何に利用できるか、そこから勉強していきたい。
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川口 個人的には旅行時の名物のお土産となるようなクッキーなどのお菓子をつくってみたい。
- 長井 みんなで話し合いながら商品開発していくのが一番楽しい。上司がOKを出してくれるようなアイデアを出したい。今後、いろいろアイテムを増やして売っていきたいね。